最近、メンタルヘルス不調を訴える知り合いが相次いでいます。
メンタルヘルス不調は年々身近な問題になり、他人事ではありません…
なぜなら自分も、あの時のあのだるさ、不眠が続く日々は早期の鬱だっただろうと思い当たるからです。それも1度や2度ではありません。
その原因となった職場環境、対人関係、パワハラ、プレッシャー、ノルマなどのストレスを思い出すと今でもぞっとします…
そんな経験、仕事をすれば誰だってあるでしょう。
現在、職場のストレスからくるメンタルヘルス不調(精神障害)、心臓疾患など年々増加し、特に自殺者の増加(年2万人超)は大きな社会問題になっています。
重要なのは、大きな問題になればなるほど、国は、それなりに労働者を守ろうと法を整え、国、事業者、労働者が一体となって取り組めるよう対応しています。
メンタルヘルス不調になっても、それぞれが、どのように対応すべきか指針がくまれているんです。
つまり、最低限、労働者は法で守られています。法において、事業者側に快適な職場作りの義務があり、整えるべき環境、やるべき対応、処置を義務付けています。
義務化に伴い、実際に心の健康対策に取り組んでいる事業所の割合は約60%。
事業所規模別でみると、100人以上の事業社で90%以上、50人以上の規模で80%を超えています。
ちなみに厚生労働省は2023年までに「メンタルヘルス対策の推進」では以下の目標を掲げています。
【目標】 (引用 厚生労働省 「職場における心の健康づくり」 )
● 仕事上の不安、悩み又はストレスについて、職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者の割合を 90%以上
● メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を 80%以上
● ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上
一方で、結果的にメンタルヘルス不調をふくめどんな病気でも転機と捉えることができます。
個人が肯定的に認識を変えるだけで、病気は、人生を軌道修正するための大きなチャンスになる可能性を含んでいます。
ただし、メンタルヘルス不調を自覚したら治療に専念しましょう。
特にうつ症状が出ている時は、判断力に欠けるので大きな決断は避けるべきだとされています。
メンタルヘルス不調は誰でもかかる病気です。
事前にできることは、まずは事業者側にメンタルヘルス対策としてどんな義務があるのかを知ることです。
ここでは最低限の抑えるべき点を掲げますので参考にしてください。
それさえつかんでおけば、万が一、メンタルヘルス不調になっても深刻化を免れるからです。
目次
労働者は守られている!
働く人のメンタルヘルスといえば「労働安全衛生法」になります。
この法律は事業者に向けて「快適職場作り」が努力義務として定められています。
余談ですが、これは2度にわたる電通社員の自殺が影響しています。
俗にいう電通事件。
91年、電通男性社員の自殺。
2015年、2度目の電通事件。東大卒の女性新入社員の自殺。
これは記憶に新しいですよね。当時注目されました。
事件後、電通に打合せに行ったとき、「労働時間のとりしまりが厳しくなり夜10時以降は仕事ができない、電気が消される」と言っていました。
業界的にも労働時間が以前より厳しくなったのを覚えています。
話を戻します。
91年の電通事件で自殺した男性社員の家族が会社側を訴えます。
そして2000年、電通事件最高裁判決で民事訴訟で安全配慮義務違反と判決が下りました。
判決が出るまで約10年ーーー。
初めて司法で会社側の過失となりました。
その結果、行政が本格的にメンタルヘルス対策を動くことになったのです。
なにも労働者の過労やストレスが原因による自殺は電通事件だけではありません。
自殺者総数が2万人超、そのうち労働者の自殺者数も 6 千人を超えて推移(※)。さらに関係機関によせられる「職場のいじめ・嫌がらせ」の相談も年々増加傾向にあります。
※参考 厚生労働省 「職場における心の健康づくり」
この状況を受けて、政府は労働者のメンタルヘルス不調対策を強化しているのです。
知っておきたい国が掲げる「メンタルヘルス不調対策」4つ
1.従業員の健康保持増進措置(トータルヘルスプロモーション=THP)
2.職場における心の健康づくり
3.ストレスチェック制度
4.職場復帰支援
簡単にそれぞれを説明していきます。
「従業員の健康保持増進措置(トータルヘルスプロモーション=THP)」
労働者の心身両面の総合的な健康の保持増進を図ることが目標です。
具体的には産業医による健康測定と全般的な指導。
必要に応じて運動指導、保健指導、メンタルヘルスケア、栄養指導します。
「職場における心の健康づくり」
2006年に「労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)」が示されました。
これは事業者に対して「心の健康づくり計画」の策定が義務付けられています。
策定にあたり、事業者が労働者の意見を聞きつつ事業場の実態に即した取り組みを行うことが必要とされています。そのために衛生委員会等十分調査審議を行うこと、とされています。
「心の健康づくり計画」により以下、4つのケアを計画的に継続的に実施されるようにし、
①セルフケア(労働者自身によるケア)
労働者に対して、セルフケアが行えるように教育研修、情報提供を行うなど支援
②ラインによるケア(管理監督者によるケア)
職場環境などの把握と改善、労働者からの相談対応、職場復帰支援など
➂事業内産業保健スタッフ等によるケア(人事・労務、産業医、衛生管理者など)
①、②が効果的に実施されるための支援、事業外資源とのネットワーク形成やその窓口、職場復帰支援
④事業場外資源によるケア(事業場外の機関、専門家)
情報提供、サービスの活用、ネットワーク形成、職場復帰支援など
※引用 厚生労働省 「職場における心の健康づくり」
さらに、4つのケアを通じて、メンタルヘルス不調に対する以下の予防が効果的に進められるようにしています。
一次予防(未然予防)
二次予防(早期発見)
三次予防(職場復帰支援)
ストレスチェック実施の義務化
厚生労働省令により心理的な負担の程度を把握するための検査、いわゆるストレスチェック実施が義務化(50人以上の労働者をやとう事業場。50人以下の場合は努力義務)されました。
これは未然防止(一次予防)にあたります。
労働者は希望者のみがチェックを受けられます。
労働者の意志が尊重されていますが、うつ病検査と誤解される人が多いようです。
結果、高ストレスと判断された場合は、本人が医師面接を希望すれば、事業者側で医者を手配しなければなりません。
※引用 厚生労働省 「職場における心の健康づくり」
なお事業者は労働者の検査結果の不正入手(個人情報保護)、結果に基づく不利益な取り扱いを禁止しています。
不利益な取り扱いとは?
❶ 解雇すること。
❷ 期間を定めて雇用される者について契約の更新をしないこと。
❸ 退職勧奨を行うこと。
❹ 不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換又は職位(役職)の変更を命じること。
❺ その他の労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること。※引用 厚生労働省 「職場における心の健康づくり」
職場復帰支援
メンタルヘルス不調により休業した労働者に対する職場復帰支援について事業者向けに手引き(マニュアル)を公表しています。
ステップ1 病気休業開始および休業中のケア
ステップ2 主治医による復職可能の判断
ステップ3 職場復帰の可否の判断、及び職場復帰支援プランの作成
ステップ4 最終的な職場復帰の決定
ステップ5 職場復帰のフォローアップ
まとめ
データは実態を物語ります。
・メンタルヘルス不調の7割が医療機関を受診していない
・メンタルヘルス不調の発症要因6割がノルマの未達成
・うつ病発症患者7割が男性
・自殺者の7割が管理職と専門職
・自殺者の7割が男性
まず男性、それも中高年の方々が追い込まれていることが明白です。
『男はつらいよ』はシャレにならず、仕事でつまづくと、家庭、職場で、居場所がなくなり、存在意義を見失いやすいのかもしれません。
一方、女性は愚痴や相談相手がいることで救われているようです。
ちなみに女性の方が生物学的にうつの発生率は高いと言われています。にもかかわらず日本だけが男性の方が高い結果となっています…
男性の方々には、気分が落ち込む、不眠が2~3週間続く、酒の量が増えた、など思い当れば、迷わず専門医に行ってください。
もしくは、「こころの耳」という、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトがあります。
このサイトでは相談をメールで受け付けているので利用することをおススメします。
知り合いではない第三者の専門家に話を聴いてもらうだけでも、かなり違うようです。
バカにせず、一度、試してみてください。
◆参考◆
厚生労働省 「職場における心の健康づくり」
木村周著『キャリアコンサルティング理論と実践』雇用問題研究会