後期高齢者が増加し、人生100年時代に突入しました。
人生100年時代なら「死ぬまで健康で、誰にも迷惑をかけずコロッと死にたい」と誰しもが願うもの。平成29年度高齢者白書によると、2025年には高齢者5人に1人が認知症になるという推計も出ています。2025年は、すぐそこです。
そして健康寿命を伸ばすために具体的な行動を始めるのは、40後半~50代と言われています。なぜなら、人生100年時代、一番恐れている病気「認知症」は発症の25年前から始まっているから、です。
逆に言えば、認知症予防を生活に取り入れれば結果的に健康寿命を伸ばすことにつながります。
そこで心がけたい「40後半~50代から始める認知症予防は5つ」を簡単にまとめました。
1.フレイル予防を意識
2.生活習慣病予防が大前提
3.認知症を正しく知る
4.食事、適度な運動、睡眠
5.好奇心に従って新しいことに挑戦
それではひとつひとつ、紹介します。
目次
フレイル予防を意識
フレイルという言葉は聞いたことありますか?
フレイルとは「健康」と「要介護」の間のこと。老化や病気の影響により心身機能が低下、要介護が必要になる状態を言います。
早めに気づいて適切な対応を取れば健康な状態に戻れます。そのためフレイルを意識して日常生活を送ることが重要になります。
参考:年代別対策
年代 | 体の症状 | 対策 |
50~64歳 | 老眼でものが見えづらい | 生活習慣病予防 |
65~74歳 | 足腰、握力、噛む力など力の低下 | 切り替え時期 |
75歳~ | 本格的な老化現象が出る | フレイル予防 |
50代からの対策は、「生活習慣病予防」に重点をおくことです。
生活習慣病予防が大前提
「生活習慣病」とは運動習慣や食生活、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣によって引き起こされる病気。主に、高血圧、糖尿病、脂質異常症などが挙げられます。
これらの疾患は認知症の約6割をしめる「アルツハイマー型認知症」にも強く影響していることが分かっています。
糖尿病になると認知症発症リスクが2倍。糖尿病でなくとも高血糖であるほど脳への悪影響は発生し認知症リスクは増加。
そのメカニズムとは?
「高血糖になると脳がインスリン不足に!!」
脳の神経細胞が糖をエネルギーにするにはインスリンが必要。
血糖値が上がるとインスリンは体内の糖だけで手一杯になり脳まで回ることができません。すると脳に届くインスリン不足が発生。
脳で特に糖を必要とする、海馬(記憶をつかさどる)がエネルギー不足になります。その結果、作業記憶が低下し物忘れやうっかりミスを引き起こすことに。
そしてインスリン不足が頻繁に長く続くとアルツハイマー病の原因物質「アミロイドβ」というたんぱく質が排出されにくくなり脳に蓄積。するとまわりの神経細胞を傷つけ死滅し、認知症リスクが高まる、のです。
高血糖か数値で判断できます。
要注意数値
・HbA1c 5.7%以上※65歳以上は6.2%
・食事2時間後の血糖値 140mg/dl以上
40~50代の生活習慣病予防に対する心得は
「もう若くない」という自覚をもつこと
その上で以下の3点に気を付けておけばOKです。
ポイント
●暴飲暴食はNG→食べ過ぎない
●気力体力の低下を認める→無理しない「ストレスを溜めすぎない、働きすぎない」
●健康診断の習慣づけ→早期発見&治療に
【補足】
女性は特に骨折や関節障害に備える→閉経後の骨密度や筋肉量の低下
生活習慣病の人は、できるだけ早く治療に本気で取り組むことが肝心です。高齢になってから高血糖を治療することはリスクを伴います。
認知症を正しく知る
認知症とは「いろいろな原因で脳の細胞が損傷、死滅し、働きが悪くなることでさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態」のこと。
認知症は歳をとれば誰でも起こりうる病気で、65歳以上の高齢者の約15%が認知症と言われています。
認知症の原因となる病気には、
「アルツハイマー病」が約60%
「脳血管障害」が20%
「レビー小体病」が10%、
「前頭側頭葉変性症」と「正常圧水頭症」など残り10%をしめます。
認知症の病気種類 | 症状 | 原因 |
アルツハイマー型 | 記憶力や判断力の低下 | 脳の萎縮 |
脳血管障害(血管性認知症) | 能力がマダラ状に低下 | 脳こうそくが主な原因 |
レビー小体病 | 幻視、運動障害など | 脳にα‐シヌクレインという物質が溜まる |
前頭側頭葉変性症(ピック病含) | 同じ言動を繰り返す、行動の抑制がきかない | 大脳の前頭葉や側頭葉を中心とする神経細胞の変性 脱落 |
正常圧水頭症 | 歩行障害 尿失禁など | 脳せき髄液という液体で脳が圧縮 |
【認知症の種類と特徴】
認知症の原因になる病気は多種多様で、合併するケースもすくなくありません。
関連
漫画家の蛭子能収氏が軽度の認知症を公表。彼の場合はアルツハイマー型とレビー小体病が合併したもの
初期症状としては、まず嗅覚の衰え※に現れると言われています。
今までの自分と違うことに気づき、自信喪失し不安を感じイライラが募ったり、怒りっぽくなったり、うつ状態になったりすることがあります。
※詳細はページ後半の『認知症のサインは嗅覚に出る! カレーのにおい、分かりますか?』をご覧ください。
認知症も早期発見、早期治療が大事です。早期に適切な治療を受ければ症状の回復や進行を遅らせることが可能だからです。
ポイント
おかしいなと思ったら…
1.かかりつけ医にためらわず相談し専門医を紹介
2.その他、各市区町村「地域包括支援センター」に相談
睡眠、適度な運動、食事
生活習慣病は近年注目され、認知度も高くなりました。そのため禁煙や適度な運動、食事、睡眠への配慮は当たり前になってきています。
それでは認知症予防からみた睡眠、適度な運動、食事でのポイントはなんでしょうか?
睡眠
認知症の約6割をしめるアルツハイマー型認知症。
その原因は、「アルミロイドβ」というたんぱく質が脳に蓄積することと言われています。「アルミロイドβ」はいわば脳の老廃物、ゴミです。正常であれば睡眠中に脳から排出されます。
ある研究では睡眠の質が良いほど「アルミロイドβ」排出量が増加し
逆に、
睡眠の質が悪いと「アルミロイドβ」が排出されず脳に蓄積することが分かりました。
それが認知症のリスクを高める原因になっています。
また恐ろしいのは、
「アルミロイドβ」の蓄積は発症の約25年前から始まっている、さらにその発症の5年前は、すでに「軽度認知障害(MCI)」という認知症予備軍の状態になっている、というのです。
「質の悪い睡眠」とは、睡眠不足や眠りの浅さ。
「質の良い睡眠」とは、1日6~8時間の睡眠と30分以内の昼寝。
そのためには「太陽光」と「適度な運動」が役に立ちます。ちなみに30分以上昼寝をすると夜に眠れなくなる可能性が高くなります。
「太陽光」と「適度な運動」
日中に太陽光を浴びたり、運動(有酸素運動)をすることで、1日の体内リズムを整えてくれます。
たとえば
30分程度の朝の散歩は非常に好都合。朝日を浴びること※で体内時計が整う上に、歩くことは有酸素運動であり、脳の認知機能を高める働きがあります。
※太陽光を浴びることで脳の覚醒を促すセロトニンの分泌が活発化。セラトニンは別名「幸せホルモン」と呼ばれています。詳細は 脳科学について【本音で生きるには潜在意識、量子力学、脳科学を味方につける その3】をご覧ください
加齢とともに、体内時計をつかさどる脳の機能は衰えます。不眠が気になる人は生活リズムを整えることを意識しましょう。
食事
50代からは、生活習慣病予防の観点から「食べすぎないこと」が肝心。禁煙、お酒も適量、バランスのとれた食事、はすでに実行している人も多いはず。
ただし「バランスのとれた食事」は、やや面倒なイメージがありませんか?
実はバランスの取れた食事とは「日本食」と考えれば十分なんです。
つまり、肉よりも魚、野菜、お惣菜、発酵食品、大豆類、果物を取るようにすればいいのです。
ただ、認知症予防という点では、1点だけ栄養素を気にかけておく必要があります。
それは「葉酸」です。
葉酸とは
ビタミンの一種でDNAを合成し細胞分裂に必要な栄養素。特に脳の悪玉物質(ホモシステイン)を分解し無害なアミノ酸に変える
国内外の研究では
・葉酸の摂取量が多いほどアルツハイマー型認知症の発症率が低い
・心筋こうそくの脂肪率が40%も低い
というデータが出ています。
認知症予防の点では、基本は日本食、そして葉酸を多くふくむ食品をとるように心がけましょう。
葉酸を多く含む食品
ほうれん草、ブロッコリーなど濃い緑の野菜、オクラ、いちご、納豆、豆腐、きな粉、さば のり、海藻類、鶏レバーなど
食品でとる限り過剰摂取の心配はありません。葉酸が豊富な食品は健康に必要なビタミンやミネラルも豊富のため体にはうってつけです。
補足
食べる順番を変えれば、効果的に血糖値を抑えられます
1.野菜をたっぷりとる
2.魚や肉などたんぱく質のおかずを食べる
3.最後にご飯やパンを
【注意点】
よく噛んでゆっくり食べる
おかずを薄味にしてご飯なしで食べる工夫を
好奇心に従って新しいことに挑戦
生活習慣を整えることに加えて、最後に1点、脳にとって、重要なことがあります。
それは刺激です。
刺激つまり、好奇心を持つことです。好奇心をもって新しいことに取り組むことは、脳にとって大いに刺激になります。言い換えれば、若さの秘訣と言ってもいいでしょう。
興味があること、惹かれること、小さいころから憧れていた、やってみたかったことがあれば率先して始めてみましょう。
新しいことに臨むことは不慣れなために悪戦苦闘することになります。それこそが脳の働きを活発化するのです。
ちなみに、一番手っ取り早い方法は「旅行」です。躊躇せず、行ってみたいところがあれば、認知症予防を理由に、どんどん行きましょう。
心が喜ぶこと、ワクワクすることを積極的に実践することは、その人らしく生きてゆくためのヒント※にもなります。
なぜなら認知症予防になるだけでなく、生きがいを見つけられるからです。きっと新たな縁も生まれ、世界が広がるでしょう。そんな人とのつながりは、認知症予防、健康寿命という点でも、重要事項です。
※詳細は、潜在意識について【本音で生きるには潜在意識、量子力学、脳科学を味方につける その1】をご覧ください。
認知症予防・改善にアロマオイルが効く?
『認知症のサインは嗅覚に出る! カレーのにおい、分かりますか?』
鼻の奥にある嗅神経は外界に接している唯一の神経。
嗅覚の情報が直接、大脳辺縁系である海馬(記憶)や偏桃体(感情)に直接届きます。その機能が低下すると脳への刺激が伝わりにくくなり脳の老化に大きく影響すると言われています。逆に刺激を与えることで脳の活性化が期待できます。
嗅覚は20代がピーク。
嗅覚が衰えると食欲・気力が減退、物忘れを起こすことも。
そしてアルツハイマー初期には脳の嗅内皮質から萎縮。この段階で気づけば早期発見、早期治療の可能性が高いと言われています。
日ごろから嗅覚には、敏感に、意識しながらにおいをチェックしましょう。
もし衰えを感じたら、特定のアロマオイルで嗅覚を改善することができます。注意したいのは植物由来の天然ものを選ぶこと。
おススメは「リ・ブレイン」。このアロマの気に入っているところは目的が明確なうえに、安心して使えるところです。
鳥取大学医学部の研究成果を基に作られたアロマオイル。アルツハイマー型認知症の早期発見、治療が専門の浦上克哉氏(鳥取大学医学部教授)が、NHKで紹介していました。
実は短期記憶がやや衰えてきた80代後半の母親がいます。
朝と夕にこの「リ・ブレイン」のアロマを使用。使って2カ月になりますが、以前より母は穏やかになり、表情も豊かになったように見受けられます。もちろん、朝の散歩、十分な睡眠、葉酸を意識した食事も実践中です。
まとめ
日本の少子高齢化はもう目の前です。
同時に、自分が後期高齢者と呼ばれるのも、そう遠くない未来にやってきます。
いつまでも若くありません…
しかし「50歳は人生の正午」と言われます。
今までの経験をふまえ、新たに自分らしい本来の人生を創っていけるのは50歳から、と意味しています。
それには、まず、体が健康でなければなりません。人生を謳歌するためには、できれば死ぬ直前まで健康でいたい。
そのためのヒントとして「40後半~50代から始める認知症予防 心がけたい5つのポイント」を紹介しました。
おさらい 5つのポイント
1.フレイル予防を意識
2.生活習慣病予防が大前提
3.認知症を正しく知る
4.食事、適度な運動、睡眠
5.好奇心に従って新しいことに挑戦
50の「今」だからこそできること、どう毎日を生きていくか、誰にも迷惑をかけず、イキイキとした後期高齢者になれるかは、自分の「今の選択」で決まります。
ただし、あまり神経質になるのは禁物です。何ごとも面白がって取り組むことを心掛けています。
参考資料
【サイト】
アクティブシニア「食と栄養」研究会 フレイル対策
https://activesenior-f-and-n.com/frail/outline.html
e-ヘルスネット(厚生労働省)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-040.html
ホンダ健康保険組合 生活習慣病とは
【本】